six-9のブログ

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[視線を上げる]か[何もしないで時間が過ぎるのを待つ]2択をユーザーに突き付ける みにくいモジカの子 感想

週末にプレイして2周間ほどでコンプした。合計20時間もプレイしていないくらいかな。ボリュームはそれほどでもないが、非常に印象に残る作品だった。面白い。

ネットの感想を見ていると、そもそも感想も少ないし、あんまり絶賛している人も居なさそう。難しいというか、尖りすぎてるせいか。

プレイ中のつぶやきをまとめたエントリへのログも残しておく。

 注意:ネタバレ全開のため、ネタバレを嫌う人はこのエントリは読まないでください。

 

 

キャラクター

  • 種崎 捨(たねざき すてる)
  • 双葉 みゆ(ふたば みゆ)
  • 四月一日 胡頽子(つぼみ ぐみ)
  • 九鬼 綺羅々(くき きらら)
  • 花 椿(はな つばき)
  • 許斐 鳴子(このみ なるこ)

漢字が難しい、というか当て字で名前を読ませるので漢字と読みが一致しない。いちおう、漢字のなまえと読み方をまとめておく。

「つぼみぐみ」と「このみ」がまったく読めない。ノベルゲーなので、当然、地の文では漢字だけが出てくるのだけれど、四月一日(わたぬき??)とか、許斐(かい? もろみ?)みたいに混乱しながらプレイしてた*1

 

システム

選択

モジカによる選択が、ゲーム性というか、選択性、一回性を意識させてよかった。

エロゲーのテンプレフォーマットとして、三択恋愛とか揶揄されるように、三択とか二択などの選択肢から行動を選択させることでシナリオを分岐させるものがある。この選択方式に対して、みにくいモジカの子は[視線を上げる]か、[何もしないで時間が過ぎるのを待つ]かという2択をユーザーに突き付ける。下倉バイオらしい。ゲーム性の実験作。

僕と下倉バイオの出会いはスマガ、スマガスペシャル、君と彼女と彼女の恋、なんだけど。スマガも主人公のうんこマンの選択肢で「あきらめない」をひたすら選択しないとクリアできなかったり*2、君と彼女と彼女の恋ではUSBキーでヒロインの選択を一回だけしか選べないようになってた。エロ「ゲー」の「ゲーム性」として、どこまでできるか、何が新しいか、という側面に非常に意識的なライターだ。楽しい。

 

一文のみのテキスト

中央に一文のみのテキスト欄。これも新しい。エロゲーのテンプレフォーマットだと、画面下にウィンドウがあって、キャラ名と三行ほどのテキスト表示欄があるもの。たまに回想などでは全面テキストなんかになるやつ。みにくいモジカの子では、画面中央に文字が白抜きで表示されるのみ。テキストウィンドウなどはない。

 

モジカによる演出

おそらく、主人公の種崎捨*3がいつも俯いていることの演出の一貫のようだ。「僕の視界は120cmだ」というモノローグから始まるテキストは印象的だ。

シナリオが進んでからになるが、モジカが重要になる花椿や許斐鳴子ルートでは、この一文のみのテキストと、モジカによる演出が相まって、みにくいモジカの子らしい視覚的な演出が見られる。よくできている。

 

攻略順 

僕は、自力で、不本意ながら四月一日胡頽子、九鬼綺羅々を攻略し、あとは何回やってもBADEND(通称:白部屋)になってしまったので、攻略サイトを参考にして双葉みゆ、花椿、許斐鳴子をクリアした。というか、攻略サイトで許斐鳴子がTRUEであることを知らされるという軽いネタバレも食らった。なお、下倉バイオ曰く、偶然でも初回プレイではTRUEには入れないような難易度で作っているらしい。

 推奨の攻略順などは無いらしいが、TRUEだけは最後にやったほうが良さそう。花椿→許斐鳴子(TRUE)の順は外さないほうがゲームの雰囲気を味わえる。

 

各ヒロインルート

 双葉 みゆ 

  「うーん。復讐セックス、気持ち良いね。心も体も満たされて、こんなの、病みつきになっちゃうね」

ポイント:みゆのルートでは、ペニバンセックスで女の子や男の子が犯されるのを楽しむことができる。

「僕は、君の醜さを知っている」というキャッチコピー。醜さはこのゲームのキーワードの一つ。OPムービー前に強制でH(というか、脅迫手コキ?)が入るのはみゆだけ。特別に思い入れがあるキャラ。
みゆは、「種崎くんが居ないとスクールカースト最底辺になるから、なんとか種崎くんを潰さないようにしないと」という「醜い利己心」から種崎に付き合う。種崎とのセックスは、利己心のために、モジカによる種崎への嫌悪と言葉による種崎への服従が描かれる。後半では、みゆの種崎を含む樹望学園生徒への復讐劇が描かれる。これも、醜い心根を表している。クライマックスで、みゆは種崎へ復讐する。このときのみゆの言葉は、モジカされても変わらない。心からの言葉を紡ぐ。そして、逆説的に、復讐の対象となった種崎にとっては、モジカに苦しむ種崎にとっては、救いになる。
みゆの初体験の「感じてるフリ」から、クライマックスの捨の初体験の「嫌がってるフリ」まで、全部が贖罪になってる。感動した。

 

 

四月一日 胡頽子

ポイント:胡頽子のルートでは公開オナニーと公開セックスを楽しむことができる。
みにくいモジカの子の変態性を象徴するようなルート。

何も考えずにモジカしているとかなりの確率で迷い込む胡頽子ルート。あまりモジカとは関係なく、メインシナリオ(樹望町やコンセイサマ)とも絡まない気がする。露出性による快感とか、秘め事とその暴露による快感の象徴として胡頽子が居る。四月一日ルートに入ると、モジカの能力を持つ種崎が、四月一日に恋して、変態性を最大限に引き出せるように奔走する。そして種崎は命を落とす。

 

九鬼 綺羅々


ポイント:綺羅々のルートでは、キメセクとペニスピアス&クリピアス開通プレイが楽しめる。
綺羅々ルートでは、種崎は、綺羅々への復讐心が執着に変わり、妄執の果に自分のことを綺羅々の恋人(ビーくん)だと思い込み、鄙びた温泉地へ駆け落ちする。そして廃人になった綺羅々と種崎は九鬼の親に「処分」されて終わる。
温泉地へ駆け落ちするあたりの描写は、相変わらず、下倉バイオらしい切なさに満ちている。駆け落ちというか、破滅的な運命からの絶望的な逃避が下倉バイオ頻出のモチーフ。スマガの時もそうだったけど。スマガの魔女(エトワール)とか、あと印象的だったのは日下部と世界の壁を超えるのとか。みにくいモジカの子では、樹望町と学園の隠された因習からの逃避になる。

基本的に主人公が酷い目にあいながら、ボロボロになりながらヒロインを救うのが下倉バイオのシナリオによくあるパターンなんだけれど、今回もその例に漏れず種崎捨がボロボロになる。もう見てらんないくらいなので、その辺がもにゃもにゃする人は苦手かもなあ。後にも出てくるけど、亀頭ピアスするシーンの力の入りようはガチ。主人公が痛い目に遭って苦しむシーンを書かせるのは本当にうまいなあ。おちんちんと金玉がシュンってなった。

 

花 椿


花椿ルートでは、特に予想外の変態プレイは無かった。気がする。無表情セックスと普通のラブラブエッチになる。*4
モジカに対抗する能力である「カンヌキ(感情を抜く)」を身に着けさせられた花椿。モジカに苦しむ種崎にとっては、モジカに苦しめられずに顔を見ることができる花椿が救いになる。花椿に想いを寄せる種崎が、花椿を救った結果、花椿は感情を取り戻してしまう。それはそれでハッピーなのだが、感情を取り戻すということは、コンセイサマと対峙する力を失うということでもあり、種崎と花椿コンセイサマに取り込まれ、その中で永遠の快楽に沈む。

花椿ルートでは、モジカが上手く使われてる。種崎捨が愛を知って(全部のルートで愛を知るのだが)モジカの力を捨てようとするとか、感情を捨てた花椿とのコミュニケーションにモジカを使うとか。結構ぐっと来た。

無表情キャラが無表情でアクメしまくってるのをモジカを通じて描写されるのは、エロゲーとしては新鮮だった。エロ漫画ではよくある描写だけど。モジカでは、文字の大きさや動き、変化があるから、なかなか新鮮な印象だった。モジカって、凍京ネクロのヘッドマウントディスプレイに出てくるピクトグラムを連想させる。モジカの方は、漢字を利用して凍京ネクロよりも和風な印象を強めている。

 

 

許斐 鳴子

 ポイント:鳴子ルートでは、授乳手コキプレイが楽しめる。とはいえ、そんなに変態プレイが多いわけでもなく、後半の純愛ラブラブエッチのほうが印象的。

真実。言葉は嘘をつく。想いだって偽ることは不可能じゃない。でも、行為は紛れもなく真実だ。
世界に背いても、人の道に背いても、僕たちは、一生、愛してる、鳴子。

地の文が独白形式で、いわゆる「信頼できない語り手」の伏線なのかな、とも予想していたが、案の定、鳴子ルートで利用された。
鳴子はTRUEっぽいキャラじゃなかったんだけど、意外だった。笑子の正体が鳴子で、樹望町を表と裏から支配する許斐永業への復讐というか、コンセイサマの排除が鳴子の目的。鳴子が、子供の頃に一緒に過ごした「えみちゃん」であることを思い出した種崎捨は、鳴子と一緒にコンセイサマを滅ぼし、子供を作って幸せに暮らそうと歩み出す。
みにくいモジカの子で種崎捨の唯一の生還エンド。

 

その他

結局、種崎捨の醜男設定(生理的嫌悪感を呼び起こさせるくらいの顔という設定)って、C†Cの黒須太一の醜男設定みたいな伏線かと予想していたんだけど、結局何もなかった。

 

 

 

*1:僕の教養が足りないせいかもしれないが……

*2:記憶が曖昧だが、たしかそんなシナリオだった気がする

*3:これも、シコ男という蔑称や、ザーメンの子種という印象や、捨てるというオナティッシュへの精子処理を髣髴とさせる

*4:普通のエロゲーだと濃いプレイになりそうなキャラほど、予想外に純愛セックスになるというか、普通のキャラに変態プレイをさせているというか……