six-9のブログ

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発達障害就労日誌が面白い

新卒がバラバラ入ってくる時期。新卒向け、もしくは、新卒を迎える上司向けのエントリやweb記事も多い。 

はてなのトップエントリに来ていたせいか、もう発見した契機は失念してしまったが、借金玉さんのエントリが刺さるのでまとめておく。*1

僕とほぼ同い年なのだが、やはり経験というか生きているベースが違うぶっとんだ発達障害者の視点からの文章が効く。*2

 

 

ワンセンテンスで殺しにかかる名言s

僕にとって睡眠薬は人生のある時期まで、酒のツマミでした。精神科に行くことと酒屋に行くことの区別がついたのは、二十歳を過ぎてからだと思います。

僕はジョブズではないということを理解するのに30年近くかかった話 - 発達障害就労日誌

 

どうしても緊張してしまう

診療内科に行って安定剤を貰うのが一番効き目がありました

就職活動攻略法TIPS集 ミミズだってオケラだって31歳ブロガーだって - 発達障害就労日誌

 

にじみ出る借金玉さんの狂気の30年

僕は自分に30代があると思ったことがありませんでした。20代も後半にさしかかるまで、30代なんてのはおそらくない、自分は20代で死ぬ。そういう根拠のない確信を抱いて生きてきました。問題を解決する必要性すら感じていなかったのです。自分自身に大きな問題があることには気づいていました。いつかそれは避けようがなくやってくるだろう、とは思っていました。でも、その前に死ぬだろうとはもっと強く思っていました。根拠のない楽観と悲観を実に器用に使いこなして現実から逃避していたのだと思います。

僕にとって睡眠薬は人生のある時期まで、酒のツマミでした。精神科に行くことと酒屋に行くことの区別がついたのは、二十歳を過ぎてからだと思います。現在、コンサータを飲むようになった僕は、適切な服薬の重要性を本当に強く認識しています。しかし、ある時期まで僕にとっての服薬とは人生の痛みを紛らわす酩酊物質を胃に放り込むことでしかありませんでした。

僕はジョブズではないということを理解するのに30年近くかかった話 - 発達障害就労日誌

 

 

診療内科に行って安定剤を貰うのが一番効き目がありました。「就職活動に疲れて、気持ちが全く落ち着かない。面接本番になるとパニくってしまう」とか言っとけば処方されるので大変便利です。ここを読んでる皆さんには、「あんなラムネ効くかよ」って方も多いと思いますが、初めて飲む方はそれなりに効果を実感できると思います。

就職活動攻略法TIPS集 ミミズだってオケラだって31歳ブロガーだって - 発達障害就労日誌

 

 

具体的な生存戦術指南。役に立つ。

まっとうな人間の皆様はここから読み始めてください。

 

 職場と上司の採点基準を見極めよう

組織に入って働くということは、常に他者の評価に晒されながら競い合っていくという要素がどうしてもあります。そして、部族によって採点基準は全く違います。「卓越する必要は全くない、とにかくミスをせず標準以上の成果を出し続ける者を評価する」とか「多少の粗は全く見ない、とにかく成果を出したものの勝ち」みたいな色んな文化が組織ごと部族ごとにあると思います。

まぁ、理想論を言えば就職前に職場の社員評価基準をある程度見極めて、自分に合ったところに入るべきなんですが、実際これが就職活動をする側からはなかなか見えないんですよね・・・。色んな会社の知人に聞いてみると、同業種でも会社ごとにかなりカラーも変わるみたいです。ただ、人員評価の傾向をざっくり二分化すると

1. 多少粗くても仕事が速く生産量が多いのを良しとする

2. 仕事の精緻さと手続きや段取りをきちんと踏んでいることを良しとする

のどちらかになると思います。1.の会社で2.の仕事のやり方を採用した場合は、「めっちゃ作業効率が良い」みたいな人に限って高評価を取れる可能性もありますが、2.を良しとする会社で1.の仕事のやり方を目指した場合は絶望的です。ボコボコにされると思います。まずは社員研修の傾向や与えられた業務、あるいは先輩方の仕事のこなし方から、自分の勤め先がこのどちらに該当するのか見極めましょう。

1.の会社で働く場合は「上手く手を抜く場所と力を入れる場所を見極めること」、2.の会社で働く場合は「無数にある部族ルールを把握してミスらず実行すること」を覚える必要がそれぞれ発生し、努力の方向性が全く逆になります。僕も新卒で入った会社は明確に2.でしたが、現在勤めている会社は完全に1.です。

努力の方向性を間違ったら全く評価されないという恐怖が組織にはあります。そして、このような評価基準は往々にして明文化されていないんですね。「空気を読む」能力に劣る我々は、意識的に把握しようと努めない限り確実に出遅れます。

 

しかし、僕も多くの人間の中で過ごしてきて少しずつ「自分を評価し監督する立場の人間に敵を作らない」「お目こぼしをしてもらう」方法を覚えて来ました。この手引のかなりの部分はそのための方法になっています。それは、とりもなおさず組織という「部族」のカルチャーであったりあるいは風習であったりといったものを尊重する、敬意を払う姿勢を見せるということに他なりません。たとえそれが茶番であると感じたとしても、茶番センサーをぶった切って全力で演じること。

これは、きっと異邦を訪れた文化人類学者みたいな作法だと思います。その文化の絶対的価値については論じない。全ての文化に相対的な価値があるという建前をまずは大事にする。こんなもんは僕にとっても単なるタテマエです。クソ食らえと思ってます。でも、異邦の地で部族に囲まれた状態で、その部族からお賃金を頂戴して生きていかなければならないわけですよ。そりゃ、火の回りを逆立ちして回れと言われたら「そういう文化なんですね」と思って回るしかないじゃないですか。AKBの衣装を着て踊れといわれたら踊りましょうよ。

「牛糞で壁を塗れ」といわれた文化人類学者と一緒です。「なるほど、建築材としての合理性はあるのだな」という考え方と、「でもそれうんこじゃん、うんこの家じゃん」という考え方は並立します。(新卒にAKBを躍らせるイニシエーションですが、合理性はかなりあると思います)どちらもとても大事な考え方です。でも、とりあえずは「へたくそな日本語を喋る愛すべきガイジン」を目指しましょう。完璧じゃなくていい、心からじゃなくてもいい。それでもわりと部族にも誠意は伝わります。意外と助けてくれます。その中でホームランをブチかませば、「なるほどあいつは得意なことをやらせておいた方が得になるっぽい」という判断をしてくれることもある。そこを目指しましょう。少しでも長く生き延びて、ちょっとでも居心地の良い場所を目指しましょう。少なくとも、無駄に敵を作る必要は一切ないんです。

やっていきましょう。

残念な新卒のための生存手引書(実践編応用3 お目こぼししてもらう、敵を作らない) - 発達障害就労日誌

 

 部族なんです。

こないだ、↑のエントリでも書きましたが、会社や組織というのは一種の部族です。トライブです。そこにはそれぞれの文化があり、風習があります。その文化の中には素晴らしく効率的なものもあれば、実に独創的なものもあります。人類は素晴らしいですね。言うまでもなく、その逆は1000億倍くらい存在します。大抵の場合、組織を支えているのは非効率的で凡庸な手法です。 

誰も意味を理解しないまま風習として定着した業務、全くの非効率でありながらも定型業務として確立している手順。そういうものが山ほどあります。外資コンサルとかそういう業種に行った皆さんについてはわかりませんが、少なくとも日本の大企業の現場はそういうもので満ちています。具体的に言えば、エクセルを電卓で検算するなどの謎の風習はあって当たり前です。

 (中略)

新卒の時というのは脳がまだ組織に染まっていないので、業務の粗が大変よく見えます。(尚、業務の粗が良く見える能力と、業務遂行能力の間には何の関係もありません)色々不満があるのもわかります。また、我々発達障害者は「これくだらなくね?」と脳が認識した瞬間、インプットが一切不可能になるという最悪の性向を持っています。興味のないものが一切脳に入っていかないアレです。

この状態に突入するリスクを可能な限り減らすために、職場に飛び込む前にこう心に誓ってください。「文化とは相対的なものであり、絶対的な尺度はない。そして自分は異部族の一員になって賃金を貰うのだ」と。(合理性とか効率性とか収益性とかそういう教義は捨ててください。そういうのは経営者になればゲロを吐くまで考えられるので、新卒の時にまで考えなくてもいいです)

いいですか、皆さんはアフリカの部族が謎の風習を持っているのをテレビで見かけても、「世界には様々な文化があるなぁ、すごいなぁ」と考えることが出来ると思います。「蛮族だなぁ」と思ったとしても口には出さないと思います。同じことです。牛糞で壁を塗れと言われたら喜んで塗ってください。AKBを踊れと言われたらノリノリで踊ってください。間違っても宣教師のような振る舞いはしないでください。首にタイヤハメられて着火されたくはねえだろ?

肝に銘じてください。組織で脈々と受け継がれる謎の風習は、宗教営為の一種です。他人の祈りの作法にケチをつけてしまったら、それも立場の弱い人間がそんなことをしてしまったら、ブチ殺される以外の結果はあり得ません。言うなれば、文化人類学者がフィールドワークをするような気持ちを持つべきだということです。そして、文化人類学者が部族に溶け込んで学ぶ必死さを出してください。(本心から部族に適応してしまうのも素晴らしいことです。可能ならそうしてください。皆さんはたぶん無理だと思いますが)

残念な新卒のための生存手引書(心構え編) - 発達障害就労日誌

 

私信 

僕も三十歳になり、なんちゃって中堅社員をやっている。いわゆる窓際社員なので、いつ辞めてもおかしくない。僕の所属している部族は、いわゆるブラック部族というやつなので、大企業様のような政治の問題はあまり気にならない。借金玉さんの、"新卒で入社した会社"のような話は無い。というか、ブラックなので、デキるやつから辞めていくパターン。借金玉さんもその類に分類されてそう。

金玉さんが書いている通り、会社だと思うと脳が対応できないので、部族の一員になると考えて臨んだほうが脳に優しい。新卒という存在は、(ある程度の規模の部族では)ナメられる。たとえあなたがどんなに素晴らしい経歴を持っていても、また、その分野で必要なスキルを十二分に有していても、部族ではそんなもの重要視されない。正確に言うと、部族の中でのイニシエーションが済むまでは、評価の土俵にも上がっていないのだ。

全くくだらない話だが、諦めて部族の一員として認められるためのイニシエーションを済ませるしか無い。*3

まああんまり期待せずに、心を殺して部族のロールプレイをこなしてください。

 

 

 

*1:Twitterだと140文字制限のせいで引用しながらのコメントができない。

*2:語り口も空々しく、唐辺葉介の電気サーカスみたい。

*3:イニシエーションがキツいと思ったら辞表を出せばよい。