株式会社ゲンロンに参加してきました.
思想地図β vol.2 緊急出版 東日本大震災と思想の言葉
シンポジウム
「東日本大震災とこれからの思想」
瀬名秀明+鈴木謙介+石垣のりこ+東浩紀日時 : 2011年5月21日(土)14時〜17時
会場 : せんだいメディアテーク1Fオープンスクエア
入場 : 無料、定員150名(予約不要、先着順)
共催 : せんだいメディアテーク
3.11震災後の言論・文学に何ができるか? がテーマだった.*1
togetterまとめはこちら→5/21(土)思想地図βトークイベント「東日本大震災とこれからの思想」ツイートまとめ at せんだいメディアテーク - Togetterまとめ
写真は瀬名さんが資料として用意したスライド三枚*2.
以下雑感.
瀬名さんは震災についてのエッセイを全て断ったとのこと.被災者としての時間・空間と作家(情報発信者)としての時間・空間には開きがあって、瀬名さん(含め作家、マスコミ、言論・文学)自身ができることはヒューマニティ災害の時間・空間である、というのは成程。瀬名さんの用意した資料はよく出来ていて、僕自身の理解に非常に役立った.瀬名さんの思いが篭っていたように思う.
石垣さんと東さんは共にお子さんを持っていて、時間という点から瀬名さんとは異なった意見を持っていた.ように思う.確かに,子どもを持っていると、情報への姿勢が変わるのはその通り.
瀬名さんが、「今は震災について語ることは出来ないが,10年,20年後に語る勇気を持ちたい」といっていた.これはまさにヒューマニティ災害(左上のスライド),終わりのない対話(右上のスライド)に対する仕事だ.トークショーの始めに示唆されていたように,言論の仕事場は災害直後ではなく,ある程度の時間経過後に状況が広範囲にわたってからになる,というのが一つの結論だと思う.
それとは対照的に,研究者に求められる,または科学に求められる役割というのは,災害直後の状況が限定的な中での助言だ,という瀬名さんの意見には同意.今回,いわゆる「サイエンスコミュニケーター」のような人たちが上手く活躍できなかったのは,この時間的・空間的なタイミングに乗り遅れてしまったからなのではないか? ここらへんで,右下のスライドの意味を再考してみる価値が出てくる.*3もちろん,右下の意思決定の問題については科学専門職かどうかには関わらず皆が一度は考えるべき問題であるのだが.
途中*4,震災後の日本の方向性として,鈴木さんが回帰直線の話を例に出して『全体として大多数が満足するような回帰直線は引けないが,グルーピングによってある程度のまとまりを持った集団の希望の方向性はつけることができる』みたいなことを言っていた.そして,それに関連して東さんも,『日本はもっと地域ごとに別れたほうが良い.例えば東北地方と関東首都圏,関西など』みたいなことを言っていた.つまりガンバロウ「日本」のような集団化はあまり良くないのではないか? ということ.
また,『希望』を語ることについて,つまりこれも言論がどう震災後の世界を牽引してゆくか,ということにつながるのだけど,それぞれ
瀬名さんは小松左京さんの阪神大震災後の作品づくりとか、なんとかっていう外国の人が書いてる希望という書籍*5を例に出して『多くの人々のそれぞれの希望観を蒐集したものの中から,一人ひとりが自分に合う希望の形を見つけ出すものなのでは?』
石垣さんも,その職業柄もあるのだろうけど,『日々の中で自分の感じた希望を伝えていくしか無い』みたいなことを言っていた気がする*6
東さんだけはちょっと面白いことを言っていて,言論の仕事はそれぞれが希望を見つけられるような「雰囲気をつくること」だと言っていた.これだけは「マス」メディアの中の人としての,今日のシンポジウムの穏当な着地点であるように思う.
鈴木さんが瀬名さんの話に乗っかって,公園とかの街中でみんなとにかくしゃべって,それをgoogleとかのサービスにアップ・ストレージして,各自が各自の希望を見つけられるようになれば良い,みたいな話をしていた.うーん…これは確かにその通りなんだけれど,そこに「マス」コミは必要ない.作家も編集者も要らなくて,ただただみんながみんなとつながってる状況.これはちょっと今日のテーマとズレてるかなー,なんて思った.だから,俺の中では瀬名さんと東さん,と石垣さんのまとめがしっくりきた.*7
最後に,今回の講演で本当に瀬名さんの発言が東北在住の被災者の心境を反映していたと思う.いい人選だった.「仙台の,被災者の言論はまだ回復していない.だから何も語れない.しかし,今回のシンポジウムは私にとって癒しになった」という最後の一言が印象的だった.
追記するなら,やはり言論の仕事は直接人を助けたりご飯をあげたり仕事をあげたりすることではない.その点で,衣食足りてなんたら,ではないけれども,震災からの再生に向けた言論の仕事というのはフィールドが独特なのかな,と思った.鈴木さんも「社会学的見地から言うと,復興に必要なのは資源と雇用とコミュニティだ*8」という発言で肯定しているように,誤解を恐れずに言えば,ほとんど言論ができる仕事はないのかもしれない.
*1:14:10頃に到着して,間に合わなかったーと思ったら,30分押しで14:30スタートになったとのことで,フルに見れて不幸中の幸いだった.
*2:こーゆーのってアップしていいのかわからないけど,意味があるような気がするのでアップします.なんか言われたら消します.あと見苦しい書き込みがあって申し訳ない…
*3:僕自身,工学研究科に所属しており,mSvとかの値については肌感覚で理解していたところもあるので,何かできたのではないかと思っている.
*4:どんな流れからかは忘れたが
*5:忘れた...いつ出版されるかわからない,みたいな話をされていたような...
*6:石垣さんの話は要点が見えなくてよくわからなかったから自信ないけれど...
*7:もちろん、鈴木さんが言った状況が実現出来れば良いとは思うけれども
*8:もちろん,それ以外の,例えば被災による気持ちや痛みの問題に対して言論の仕事が必要なのでは? との問いかけにつながるのだが...