Caution! ネタバレあるかもしれないので気をつけてください。
どうやらポストひぐらしとか言われていたらしいOmegaの視界が完結した、とのポップをアキバのとらで発見。なんとなく買ってみた。
結果から言うと、全くポストひぐらしにはなりえない*1。新しい! と思う点はなかった。強いて挙げるなら、●を利用した多重表現だが、個人的には表現として不親切過ぎて評価できない。
さて、いくつか重複するが個人的な減点対象は以下のとおり。
主観的な独白が空転してテーマが直截に語られること無く進行するため、非常に読み解きづらい。さらに、猫箱、つまりシュレーディンガーの猫を引用して、観測されるまでは決定されない、というのもテーマにしているようだが、ストーリーにそれが組み込まれていない*2。●を利用した表記により表現を試みているのだろうが、今ひとつである。また、テクスト自体も〜的な(cf. ノベルゲーム的な)といった安易かつ未熟な表現が見られた。個人的にかなりゲンナリ。
内容は西尾維新の戯言シリーズに非常に近いと感じた。掛言葉を利用した意味の多重化や、異能バトル、(自称)巻き込まれ型の主人公、などなど。悪く言えば劣化コピーなのよね。
クライマックス*3では、♂と♀の違い、性差がテーマとなる*4。 しかし、それをテーマにするなら♂と♀の中間種たる西石音(きぃ)にクローズアップすべきだと思う。生死不明って、もうテーマぶん投げたようなもんだろ……そして明らかに真言と宮さんの対比たるミルハ兄妹の兄にはまったくスポットが当たらんし。エピローグで「永遠に解り合えないけれど、寄り添って生きていくことができる」っまこくんに言わせてるけど、え? なんでその結論になるの? と置いて行かれるばかり。なぜか冬夏とくっつくが、どうして姫様でもなく克枝でもなく冬夏なのか、さっぱり説明が無い。ストーリーテリングとして、完全に骨折している気がする。
しかし、である。
綺麗な散文としての表現を捨てた代わりに、韻文としてのリズム感が全体として現れている。まさに「感得」するような、独特のリズムである*5。掛言葉の多用も韻文的である。それらにより、まるで、萩原朔太郎の詩のように、破壊的な言葉の流れを作っている。作中で彼女らが別離のあいさつに使用する「Omegaの瞳に祝福あれ」という言葉も、意味を考えるのではなく、意図することを「感得する」ものなのだろうか。
死んでみたまへ、屍蝋の光る指先から、お前の霊がよろよろとして昇発する。その時お前は、ほんたうにおめが(、、、)の青白い瞳(め)を見ることができる。それがお前の、ほんたうの人格であつた。
ひとが猫のやうに見える。
『Omega の瞳』http://homepage3.nifty.com/sakutarou/read/cho_ruby/choo_yumemuindex.htm
(ま、つまりよーわからん作品でした、ということ。)
(追記)
あんまり良いレビューサイトに当たらなかったけれど、ジグザグパラドックス Omegaの視界 雑感想はけっこう良かった。解題については、成程。宮も良いけど、狩屋も良いよ。